2025.02.20
【法人向け】蓄電池で災害時の停電に備える5つのメリットを紹介!
「災害対策として蓄電池を導入するメリットを理解したい」
「蓄電システムの導入にかかる費用や、維持管理費用を把握したい」
災害対策を検討しているものの、蓄電池についての不明点が多く対策を進められないケースもあるのではないでしょうか。
気候変動の影響で自然災害による被害が激しくなっている中、非常時に事業を継続する方法など法人ではBCP対策の策定が必要になっています。
本記事では、蓄電池で災害対策する5つのメリットや、必要な費用について解説します。メリットや費用感が分かると、蓄電池の導入も検討しやすくなりますので、ぜひ最後までお読みください。
災害対策における蓄電池導入の必要性
停電になると事業に以下のようなリスクが考えられるため、蓄電池は災害対策として必要な設備です。
- 製造業の場合:工場の生産ライン停止
- 小売業の場合:夏場は特に冷凍・冷蔵できず商品のロスが発生
- 介護福祉業の場合:夏場にエアコンが使用できず、施設利用者が熱中症になる恐れ
災害などで停電になっても非常用電源として蓄電池を導入していれば、容量分は電力を使えます。わずかでも停電中に使える電力があれば、復旧作業をスムーズに進められるため、被害を少なくできます。
損失を最小限に抑えるためにも、災害大国の日本では蓄電池の導入は事業継続の観点で重要です。ただし、ポータブルタイプの蓄電池は家庭向けのため、法人向けの定置用蓄電システムが必要となります。
法人が蓄電池で災害時の停電に備えるメリット5選
蓄電システムを法人が導入して得られるメリットは、以下の5つです。
- BCP対策として非常時に備えられる
- 停電時に地域に貢献できる
- 太陽光発電との併用なら平時に電気代を削減できる
- 太陽光発電との併用で環境負荷の軽減に貢献できる
- ピークカットによる電気料金の削減
どのような利点があるか、1つずつ説明します。
BCP対策として非常時に備えられる
BCPでは自然災害や火災など緊急事態が発生したときに、被害を最小限に抑えて事業を継続する手段を策定します。地震や台風などによる停電に備えて、非常用電源を確保しておくのもBCP対策の1つです。
蓄電池は充電できていれば、非常用電源として利用できます。毎年のように自然災害による被害が発生する日本の企業において、BCP対策として電力の確保は重要事項です。
非常時の電源として利用できてBCP対策にもなる点が、蓄電池を法人が導入するメリットと言えます。
停電時に地域に貢献できる
自然災害などで停電が発生した際、電力の開放により地域に貢献できる点も蓄電池を導入するメリットの1つです。2019年に発生した台風15号で被害が大きかった千葉県匝瑳市では、ソーラーシェアリングの発電事業者によって、地域住民に電力が供給されています。
このように、大規模停電が発生して電力の復旧に時間がかかる場合など、地域住民に蓄電池の電気を供給できれば、企業としての社会的責任を果たせるでしょう。
太陽光発電との併用なら平時に電気代を削減できる
蓄電池を自家消費型太陽光発電と併用すれば、購入する電力量を減らせます。近年では電気料金の値上がりで、利益が減るなど企業の経営を圧迫するケースもあり、消費量の低減による電気代削減は大きなメリットです。
一方で蓄電池単体の場合、充電の電気代が増えるため、ランニングコストの面ではデメリットとなります。太陽光発電と蓄電池の併用により、効率よく電気代を削減できるでしょう。
太陽光発電との併用で環境負荷の軽減に貢献できる
自家消費型太陽光発電と蓄電池のセット利用で、CO2削減量の割合を増やせるメリットもあります。
日本の電力の約8割は、火力発電によるものです。しかし、化石燃料を燃焼させて電気をつくる火力発電では、環境負荷の原因であるCO2が発生します。
CO2を排出しない太陽光発電と蓄電池を併用すれば、火力発電による電気の消費量が減り、環境負荷の軽減に貢献できます。
ピークカットによる電気料金の削減
電力会社は、直近1年の中で最も電力消費量が多かった時間帯を基準にして、基本料金の額を決めています。これは、昼間など電力の消費量が多い時間帯に、購入する量が減れば電気料金が下がる可能性があるということです。
電力消費量がピークを迎える時間帯に蓄電池の電気を使うようにすれば、電力会社が電気料金を決める際の指標としている値が小さくなります。ピーク時の電力消費量を蓄電池の活用で減らすことで、電気料金を抑えられるメリットがあります。
蓄電池のみで電気を使える時間の長さ
停電時に蓄電池の電気を使用できる時間は、蓄電容量と電力消費量によって変わります。
蓄電池の容量を表す単位のkWh(キロワットアワー)は、1時間あたりに使用できる電力量です。定格容量が6kWhの蓄電池なら、1時間で6kWの電力を消費できます。
例えば定格容量が25kWhの蓄電システムをフル充電している場合、以下のような設備を1時間使用できます。
- 消費電力量1.3kWのエアーコンプレッサー1台
- 消費電力量4kWの空調設備2台など
停電の復旧に数日かかる場合、蓄電池の充電が切れたら電気を使えません。災害対策の観点で考えると、蓄電池は太陽光発電と併用がおすすめです。
産業用蓄電池の導入にかかる費用
法人向けの蓄電池を設置すると発生する費用は、以下の2つです。
- 初期費用
- 維持費用
それぞれ平均的な費用がどれくらいなのか、説明します。
産業用蓄電池の平均的な初期費用
環境省が紹介している自己所有型の導入事例を参考にすると、産業用蓄電池の工事費を含めた初期費用は平均で約17万円/kWhです。
平均的な費用は約17万円/kWhですが、蓄電池を設置する建物の状況で屋根の補強など追加工事が発生すると費用は高くなります。自社のケースでの詳しい初期費用を確認したい場合は、業者に現地調査と見積もり依頼が必要です。
参照:自家消費型太陽光発電・蓄電池の導入事例集|環境省
産業用蓄電池にかかる維持費用
蓄電池のメンテナンス費用は、平均で初期費用の約0.3%です。メンテナンス項目には、主に以下の内容が含まれます。
- 定期点検
- 空調設備の点検
- 部品交換費用
維持費用についても、蓄電池を設置する環境により費用が増減する可能性があります。依頼するメンテナンス業者によっても価格設定や対応範囲が異なるため、詳細な費用は個別に確認が必要です。
参照:定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査|株式会社三菱総合研究所(経済産業省)
蓄電池の導入に利用できる法人向け補助金3選
導入費用が年々低下している太陽光発電システムと比較すると、蓄電システムはコストが高止まりしていることが課題とされています。
初期費用の回収期間が長期化する懸念もあり、蓄電池の導入があまり進んでいない状況です。このため、政府や地方自体では蓄電池を普及させるため、補助金の給付で支援しています。
以下では、蓄電池導入の初期費用に利用できる補助金を3つ紹介します。
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
自家消費型太陽光発電と蓄電池の、導入費用の負担を軽減できる補助金です。オンサイトPPAやリースなど0円ソーラーの導入を支援することで初期費用の負担軽減と、ストレージパリティの達成を目的としています。
補助対象設備
- 太陽光発電設備
- 定置用蓄電池
※太陽光発電を新規導入する場合のみ補助対象
- 車載型蓄電池
- 充放電設備
補助対象者
- 民間企業
- 個人事業主
- 独立行政法人
- 学校法人
- 社会福祉法人
- 医療法人
- 各種の社団法人
- 協同組合
補助金額
設備 | 補助金額 |
太陽光発電システム | 4万円/kW
※オンサイトPPAまたはリースでは5万円/kW |
定置用蓄電池 | 4万円/kWh |
車載型蓄電池 | 蓄電容量の1/2に4万円を乗じた額 |
充放電設備 | ・設備費:1/2
・設置工事費:1基あたり上限95万円 |
参照:令和5年度(補正予算)および令和 6 年度ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低
減促進事業(二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金)公募要領|EIC(環境省)
注意事項
2024年度は2次公募の受け付けも終了しています。予算が残っていれば3次公募の可能性もあるため、補助金を利用したい場合は、情報のチェックが必要です。
平時の省CO2と災害時避難施設を両立する新手法による建物間融通モデル創出事業
複数の建物同士で電力を自営線で送配電できる仕組みの構築を支援し、CO2削減と災害時における電力インフラ整備の推進を目的とした補助金です。
補助対象設備
- 太陽光発電など再生可能エネルギー発電設備
- 自営線
- 受変電設備
- 定置用蓄電池
- 充放電設備
- 充電設備
- EMS(エネルギーマネジメントシステム)
- 通信・制御機器
- ヒートポンプや空調など制御可能な設備
補助対象者
- 民間企業
- 独立行政法人
- 学校法人
- 社会福祉法人
- 医療法人
- 各種の社団法人
- 協同組合
補助金額
補助対象経費の1/2
補助対象経費
- 工事費
- 設備費
- 業務費
- 事務費など
注意事項
2024年5月10日に、2024年度の公募は終了しています。2次公募の予定がないため、利用する場合は補正予算案による公募開始を待つ必要があります。
参照:令和5年度(補正予算)及び令和6年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業平時の省CO2と災害時避難施設を両立する新手法による建物間融通モデル創出事業のうちTPOモデルによる建物間融通モデル創出事業公募要領|一般社団法人 環境技術普及促進協会
令和6年度課題解決型太陽光発電施設導入事業補助金
広島県による、蓄電池の導入にも活用できる補助金を紹介します。脱炭素社会を実現するため、太陽光発電や蓄電池の導入促進を目的とした事業です。
補助対象設備
- 太陽光発電設備
- 蓄電池
- 充放電設備
※広島県内での設置に限る
補助対象者
- 広島県内で対象事業を実施可能な法人
- 補助対象設備の所有者
- 対象事業を円滑に実施できる法人
- 日本国内に事業所のある法人
※広島県による補助金交付停止の対象に含まれないこと
※銀行から取引停止処分を受けていないこと
※主な目的が宗教活動や政治活動でないこと
※暴力団等とかかわりがないこと
補助金額
補助対象経費の1/2以内
補助対象経費
- 工事費(付帯する工事を含む)
- 設備費
- 事前調査費
注意事項
- 広島県が定める設備の要件を満たすこと
- FITやFIP制度を利用しないこと
- 事業で得られる環境価値の中で、電力の需要家が使用した分の環境価値を需要家に帰属させること
参照:課題解決型太陽光発電施設導入事業補助金交付要綱|広島県
蓄電池を導入する際の注意点3選
災害対策として蓄電池の導入を検討する際、注意したい事項が3つあります。
- 初期費用の負担が大きい
- 蓄電池を設置するための広いスペースが必要となる
- 経年劣化により蓄電量低下の懸念がある
何に注意するべきなのか、1つずつ見ていきましょう。
初期費用の負担が大きい
蓄電池の初期費用が高いことを、経済産業省が課題としています。2030年度までの業務・産業用蓄電池の目標価格は工事費込みで6万円/kWhと設定されています。
しかし現状は、製造コストがかかるなどの理由から、販売価格が高止まりしている状況です。蓄電容量が大きくなれば初期費用も高くなり、初期費用回収完了までの期間が長くなります。
補助金の活用により、初期コストによる費用負担を軽減した上での導入がおすすめです。
蓄電池を設置するための広いスペースが必要となる
業務・産業用の蓄電池は、筐体の外形寸法が大きく重量もあります。京セラ社とパナソニック社の蓄電池の、外形寸法と重量は以下表のとおりです。
メーカー | 外形寸法(W×H×D) | 重量 |
京セラ | 1,800×2,060×1,090mm | 1,150kg |
パナソニック | 1,000×1,850×940mm | 750kg |
このように、外形寸法や重量はメーカーや型式で異なります。しかし、コンパクトタイプの蓄電池でも産業用は大きさや重量があるため、設置には十分なスペースが必要です。
経年劣化により蓄電量低下の懸念がある
機械類は長期間の使用により、経年劣化が進みます。蓄電池も経年劣化によって、蓄電できる電力の割合が減少します。災害発生時に想定よりも使える電力量が少ない事態にならないよう、定期的なメンテナンスによる対策が重要です。
災害対策としての蓄電池の導入事例6選
災害対策を目的に太陽光発電と蓄電池を導入した、以下6社の事例を紹介します。
- ハルナプロデュース株式会社
- 日本興運株式会社
- 株式会社日本ピーエス
- 株式会社山王
- 日本ファインセラミックス株式会社
- 株式会社藤田エンジニアリング
設備の導入により、どのような効果が得られているか、順に見ていきましょう。
ハルナプロデュース株式会社
CO2など温室効果ガスの削減と災害対策を目的として、太陽光発電と蓄電池をオンサイトPPAスキームの活用により導入した事例です。災害時には導入した蓄電池の電気を開放し、スマートフォンの充電などでの利用で地域貢献を想定しています。
導入した設備
- 自家消費型太陽光発電:380kW
- 蓄電池:15kWh
成果
- 年間の平均CO2削減率:約5%
- 年間のCO2削減量:約192t
日本興運株式会社
事業によるCO2排出量削減とBCP対策のため、物流センターに太陽光発電と蓄電池を導入した事例です。約85%の電力の自家消費に成功しており、CO2の排出を抑制しています。また停電時にも事業を継続できるよう大型の蓄電池を導入して備えています。
導入した設備
- 自家消費型太陽光発電:130kW
- 蓄電池:172.8kWh
成果
- 年間の平均CO2削減率:約50%
- 年間のCO2削減量:約61t
株式会社日本ピーエス
リースモデルを活用し、新設の工場に太陽光発電と蓄電池を導入した事例を紹介します。主な目的はCO2排出量の削減で、太陽光発電の余剰電力を蓄電池に溜め、夜間は蓄電池から自家消費し再エネ比率を向上させる取り組みです。蓄電池の自立運転機能により常に一定量の充電を保ち、非常用電源としての活用も想定しています。
導入した設備
- 自家消費型太陽光発電:700kW
- 蓄電池:750kWh
成果
- 年間の平均CO2削減率:約49%
- 年間のCO2削減量:約310t
株式会社山王
自己所有で、自社の施設に太陽光発電と蓄電池を導入した事例を紹介します。太陽光発電の電力を自家消費することで、CO2排出量の削減に貢献することが目的です。余剰電力を蓄電池に貯める仕組みにより、太陽光発電のシステム容量の最大化を図り、停電時のBCP対策としても電気を活用します。
導入した設備
- 自家消費型太陽光発電:449.5kW
- 蓄電池:159kWh
成果
- 年間の平均CO2削減率:約7%
- 年間のCO2削減量:約317t
日本ファインセラミックス株式会社
製造過程での電力消費量が多い工場に、自己所有型の太陽光発電と蓄電池を設置した事例です。太陽光発電の設置によって電力を自家消費し、間接的なCO2排出量の削減を目指しました。また、停電が発生した際に稼働中の設備を安全に停止させられるよう、蓄電池も導入しBCP対策を強化しています。
導入した設備
- 自家消費型太陽光発電:400kW
- 蓄電池:346kWh
成果
- 年間の平均CO2削減率:約13%
- 年間のCO2削減量:約174t
株式会社藤田エンジニアリング
空きスペースを有効活用するため、本社の社屋に太陽光発電と蓄電池を自己所有で設置した事例を紹介します。本社の脱炭素化およびBCP対策の強化と電気代削減を目的として、自家消費型太陽光発電を導入し休業日の余剰電力を蓄電池に蓄電する仕組みです。停電が発生した際もパソコンや携帯電話などを使用できるように、蓄電池で最低限の電力を確保し、非常事態の事業継続を図ります。
導入した設備
- 自家消費型太陽光発電:11kW
- 蓄電池:15kWh
成果
- 年間の平均CO2削減率:約44%
- 年間のCO2削減量:約4t
まとめ|蓄電池で災害時に備えるなら太陽光発電との併用がおすすめ
充電して繰り返し使用できる蓄電池は、災害時に非常用電源として電力を確保できる設備です。
日本は災害大国と言われるほど、地形や位置、気候など様々な条件下で自然災害が発生しやすい傾向があります。いつどのような自然災害が発生して、非常事態が起きてもおかしくありません。
規模の大きい自然災害の発生で停電などの被害が起きたときに、電気が復旧するまで事業停止を強いられて廃業に追い込まれないための対策が必要です。
蓄電池のみの導入でも、災害への対策になります。太陽光発電と併用すれば、平時の電気代削減や環境負荷の軽減に貢献できるなどのメリットを得られるため、おすすめです。
災害対策で蓄電池の導入をご検討中の方は、ぜひ実績豊富なエコラボにご相談ください。